【葬儀Q&A】お布施に料金表がない理由は?
お布施に決まった料金表がないのはなぜですか? 料金表さえあれば安心できるのですが、料金表がないといくら取られるかわからず不安です。
お布施に料金表がない理由は、料金表を作ってしまうと、お寺の収入が減ってしまうからです。
【1】お布施の価格競争に発展する
例えば、お寺Aが、次のような料金表を作ったとしましょう。
- 読経料・・・50万円
- 戒名料・・・100万円
この場合、読経のみの依頼だと「50万円」の利益で、読経と戒名のセットで依頼されると「150万円」の利益になります。
仮に、読経のみの依頼が月に15件、読経と戒名のセットでの依頼が月に15件あるとしましょう。すると、お寺Aの収入としては次のようになります。
お寺Aの収入=50万円×15件+150万円×15件=3,000万円
しかし、ものごとはこんなに単純ではありません。料金表を作ると、ライバルのお寺が、価格競争を仕掛けてくるかもしれないからです。
ライバルのお寺Bがより安い料金表を作ると?
お寺Aのライバルであるお寺Bが、次のような料金表を作ったとします。
- 読経料・・・25万円
- 戒名料・・・50万円
すると、お客さんは、お布施の安いお寺Bばかりを利用するようになるかもしれません。仮にお客さんが3分の1になったとすると、お寺Aの収入は次のようになります。
お寺Aの収入=50万円×5件+150万円×5件=1,000万円
お寺Bに対抗して新しいお布施の料金表を作ると?
お客さんがこのまま減り続けると困るので、お寺Aが、新しい料金表を次のようにしたとします。
- 読経料・・・15万円
- 戒名料・・・25万円
この場合、読経のみの依頼だと「15万円」の利益で、読経と戒名のセットで依頼されると「40万円」の利益になります。
お客さんの数がもとに戻ったとして、読経のみの依頼が月に15件、読経と戒名のセットでの依頼が月に15件あったとしましょう。すると、お寺の収入としては次のようになります。
お寺Aの収入=15万円×15件+40万円×15件=825万円
このような感じで、料金表を作ってしまうと、ライバル同士で価格競争に発展しかねません。そうなると、収入が減ってしまうため、料金表を作らない方がいいという判断になるわけです。
【2】お布施をタップリ払ってくれる太客からの収入が減る
お布施の料金表を作ってしまうと、収入が固定されてしまいます。例えば次のような料金表を作ってしまうと…
- 読経料・・・15万円
- 戒名料・・・25万円
すべてのお客さんから、読経のみの依頼で「15万円」、読経と戒名のセットの依頼で「40万円」しか受け取れなくなってしまいます。
ですが、料金表がなければ、もっともっとお金を払ってくれる「太客(ふときゃく)」がいるかもしれません。例えば、読経だけにもかかわらず100万円払ってくれたり、戒名料込みで500万円払ってくれる人がいるかもしれないわけです。
- とても信心深い人
- 知識のないお金持ち
- 見栄を張るタイプの人
- 弱腰な人(気弱な人)
- お金を多く払うことで精神的に救われたい人
こういった太客を、みすみす手放すのはもったいないです。ビジネスとして考えた場合に、料金表を作ることには、お寺の側にはデメリットしかないわけです。
以上のような理由から、お寺はお布施の料金表を作ろうとしません。お布施は「お気持ちで!」というのは、料金表を作らずに済ませるための建前と言っていいでしょう。